それなりに生きている | 群ようこ

群ようこというのは、私の中では「本の雑誌」で事務員をしてたらエッセイストになれたラッキーな人、くらいの認識しかなかった。
世間的には「猫好きなおばさん」という感じなのだろうか。
猫に対して何の思い入れもない読者からすれば、読めば面白いが、全作品を読みたいと思えるほどにはまる何かは無い。
まぁ毒にも薬にもならない、イラストレーションのような作風の人だと思う。(無くても全然困らないが、あればあったで良いしという・・・)


・・・のだが、最近、本屋で配ってる無料の宣伝誌の中に掲載されていた作品をたまたま目にして、日々寄る年波を実感しつつゆるゆる暮らしている独身女性の生活、という作風に少し親近感を覚えてしまった。
ということで、手に取ったこの本。


しかし猫好きな独身おばさんというのは、当然、一般的な「おばさん」(主婦で、子供は大学生で、旦那はサラリーマン・・・みたいな)と比べると、やっぱり個性が際立ちますね。


少し前にさかもと未明がJALの機内でガキ相手に暴れた話で大変に物議をかもしていたが、群ようこもこの地味な作品の中でなかなか物騒なことを書いている。
Amazonにひとつだけついてた書評でもそのことに触れていたから、やはり誰が読んでも穏やかでないものがあるということだろう。
私的には、どっちかというとこれを編集が通したということの方にびっくりである。


その内容を一言でまとめると、「子供はうるさいので、少子化くらいがちょうど良い」である。


まぁもちろん彼女としては半分冗談なのであろうが、結構半分、本気(マジ)のような気もする。


私も上記のさかもと未明が遭遇した状況について、自分だったらどうだろうかと考えるまでもなく、(クレームはともかくとして)間違いなくイライラする。
(だから飛行機を予約するときは、必ず「幼」マークから遠い席を選ぶ。)
私も群さんと同じで、自分に子供がいないし、子供を特別にかわいいと思うこともない。
また、群さんも書いていたが、私も子供時代、とても聞き分けの良い子で、ギャン泣きしておもちゃの前から一歩も動かない、というようなことはついぞ無かった。
というより、親が厳しくてそんなことをしようものなら(言葉の)鉄拳制裁が飛んでくるので、とてもじゃないがそんな我儘は言えなかったのである。
だからファミレスで奇声をあげながら走り回るような子供は、子供の性質というより親のしつけに問題があるのではないかと、ついつい思ってしまう。


だが、さすがに私には群さんのように「少子化でちょうど良い」と言う勇気はない。
大手小町など読んでいるとたまに
「私たちは子供を産んで国の役に立っているのに、お前らは遊び呆けて子供も産まず女としての義務を果たしてない」
というような主張を見かけるが、まったくその通りでございます、あいすみません、という気持ちがあるからだ。
なので、極力子供が好きなふりをし、少子化を憂うふりをし、電車で泣き叫ぶ赤ん坊の声も気にならないふりをする。
経産婦ならストレスフリーな状況で、我々独身女性は二重のストレスにさらされる、という訳だ。


しかし日本は子供に優しくない国だというが、老人にも病人にも、基本的に誰にも優しくない国だ。
時間をこれほど厳守し、遅刻に厳しい国は他にないし、「普通」と言われる道を外れることにも大変厳しい。
人生の寄り道などありえないし、失敗も許さないからやり直しもきかない。
清潔で新しいものが好きだから、汚いものや古いものを許さない。
小さくて幼い女が好きだから、成長して知恵のついた女は受け入れない。
当然、「日本人」以外の日本人は認めないし、移民などもっての他だろう。
そんな国が、小さな子供だけには寛容になれ・・・だなんて、ずいぶん都合の良い話じゃないか?


小心なおばさんの主張はせいぜいこのくらいが限度である。
それに子供はうるさくても、自分の近くにいなければいいだけの話。
若いお嬢さんたち、婚活に励んで産めよ増やせよ
そんで年金よろしくね!

それなりに生きている

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