カシマーの哀しみ



近頃は毎朝、国営放送のニュースにチャンネルを合わせる。
民放のノリはイライラするだけだし、かといって朝の清らかな空気を12チャンネルに汚されるのも耐え難い。何が悲しくて毎朝証券会社のサラリーマンの顔を大画面で拝まなければいけないのか。


というわけで私は毎朝、鈴木アナの柴犬みたいな、ちょっとぼんやりした感じ笑顔に癒される。


・・・可愛いなぁ。この子、本当に性格が良いんだろうなぁ。


ということを、中でも最も強く感じるのが、その中のいちコーナー、「まちかど情報室」である。
このコーナーの見どころはなんといってもこの国営放送のドロドロした内面を垣間見るような「鹿島いじめ」である。


鈴木いじめじゃなくて?


視聴者の多くはそう思うだろう。


だが違う。
これは40歳の鹿島アナをいじめるコーナーだ。


巧妙・・・とはとても言い難いほどみえみえの演出。
おばさんアナ・・・京大法学部卒の才媛が、30歳の少しぼんやりした感じの、国民のアイドル、鈴木アナを「お局」プレイでチクチクといじめるという筋書き。
それを喜々として演じる鹿島アナ。
頭が下がる。


このキャスティングにおいて重要なポイントのひとつは、鹿島アナが不細工だというところだ。
その彼女が、鈴木アナとほとんどお揃いの、ひざ上15センチのミニスカートで画面に登場する。
そのえら張った顔とは似つかないほどに細い小枝のような脚。
美脚という評判もあるようだが、それはやはりどちらかというともの悲しい見世物。


普通に想像してみて欲しい。
あなたのオフィスに、アラサーちゃんと同じ格好をした40歳の女性社員が座っているところを。
おそらく多くの男性社員は微妙な感情を抱くのではなかろうか。


さらに重要なポイントは、そんな鹿島アナは結婚しており、鈴木アナは独身ということ。
だからことあるごとに、彼女は、鈴木アナを「家事」も「料理」も「結婚」も出来ない負け犬としてあざける。
たとえ若かろうが美人だろうが、あなたは「女として足りてない」。


・・・というのが、毎朝毎朝、繰り返される筋書き。


いったいプロデューサーは誰に向けてこの小芝居を演じさせているのか。
日頃、おばさんとして虐げられているアラフォーの主婦が、この小芝居を見て胸がすくとでも思っているのだろうか。


おっさんたちが、いじめられてもいじめられても健気に笑顔で切り返し耐え忍ぶ鈴木アナを、尚のことかわいいと思って、これだからおばさんは・・・と鹿島アナを邪魔に感じるのが関の山ではなかろうか。


そして多くのアラフォー女性が、結婚していようがいまいが、何らかのシンパシーを鹿島アナに感じ、毎朝心の中で少しだけ泣いているのではなかろうか。


頑張れ綾乃。
サラリーマンは悲しいね。
男でも女でも。