そのストラテジー、大丈夫?



以前にも言及した「Mr.サンデー」の「ニッポン新書 ニッポン社会学のすすめ」というコーナー。
今回は年の婚狙いの20代女子にスポットを当てていた。


実際のところ、番組が主張するように、以前よりも若い子が年の差婚(ここで言われている年の差は加藤茶ラサール石井のケースであって、決して吉田美和系ではない。)志向が強まっているのかどうか、私は身近にそういう話は聞かないし、番組の中でも、これといった統計データを示していた訳でもなく、恣意的に編集された街角インタビューからだけでは測りかねるものがある。


だが少なくとも番組に登場していた二人の女性は年の差婚狙いであり、しかもそれは好みの男性が「渋いおじさま」だからという訳ではなく、あくまで外見的には限りなく若く、しかし内面・・・精神も財布の中身も・・・は成熟した男性に限る、というのだから、ぶっちゃげ「金づる」を探している訳である。


いや、それはそれで全く否定しない。
私も結婚相手の収入が「全く」問題にならないかといえば、そんなことはあり得ないだろうと思う。
まして「若い」私が、「おっさん」のあなたと結婚してあげるのだから、それ相応の見返りは要求するわよ、というのはまぁある意味真っ当な交渉であろう。


二人が口を揃えて言っていたことは「安定したい」。
あわよくば専業主婦になって子育てしたい。
つきましては、性的には枯れかけてて、十分なお給料を稼いでくれる、包容力のある男性に安心して人生を任せたいので、この際年齢は問いませんと。


だけどそれが戦略として正しいのかといえば、私には随分と的外れなように思える。


理由その1。
そもそも婚活市場に残ってるような、30代半ばから40代にかけての独身男性は、金が無いから結婚できないか、金があっても金を使えないから結婚できないか、の2択である。
「いや、私の周りには金もあって、金の使い方も知ってる独身貴族がいますけど」と言いたくなる人もいるだろうが、大丈夫、そういう男はそもそも婚活市場には出回らないし、市場外でも婚活女子のようなレベルとは真剣に相手をしない。


理由その2。
男は何歳になっても包容力などない。
もし30代40代で包容力があるように見える男がいたら、その人は男ではなく父である。


理由その3。
仮に同じくらいの年の男の子と比べて、彼らの年収が名目で高く見えるとしても、実際にはあなたが結婚する時が年収のピークだ。
そんな高値で入ってロングしちゃったら、後は損が膨らむ一方。
万が一、結婚して数年でリストラなんかされちゃったら、次の仕事を探そうったってなかなか見つからない。
むしろまだまだ安い若い子の方が上昇余地があって楽しみではないか。
日本経済が右肩下がりだからといって、彼ら全員が右肩下がりという訳ではないのだ。
変化する世の中に対する適応力も若い人とおっさんでは全然違う。
これからますます混迷する世の中にあって、柔軟性というのは最も重要な力の一つではないだろうか。


理由その4。
残念なことに、おっさんは君たち若い子が思う何倍も頭の中が石灰化している。
逆に私たちのような40前後のロスジェネ世代から見て、今の若い子たちは本当にリベラルだと思う。
もちろん個人差が大きいだろうが、一般的に見て今の20代の男の子と40代のおっさんを比べてどっちがよく家事や子育てを手伝うかと言えば、圧倒的に20代男子だろう。
そもそも体力が違う。35で結婚しても子供が小学校に上がるときには40代前半である。パパさんリレーでアキレス腱切るくらいなら運がいいかもしれない。
更に、夫が年寄りということは、その親は更に年寄りだ。
結婚早々に義父母の介護という事態も想定しておいた方が良い。
そんなこんなであらゆる仕事があなた一人に集中する可能性は非常に高いと予想される。


しかし、そうは言っても「結婚」ということだけを目標とするなら、20代で年の差婚を狙うこと自体は、こと「婚活」においては非常に有効なストラテジーであることは間違いない。
番組の中でゲストの優木まおみは「20代にマーケットを荒らされたら、私たち30代女子はどうすればいいの!?」とお冠だったが、そういうことだ。
若いというだけで、芋みたいな顔した子だって、(最初の話と矛盾するようだが)同じ年頃だったら歯牙にもかけてくれないクラスの男と出会うチャンスもあるだろう。
だがその男が本当に彼女たちの望むような「安定した生活」を与えてくれるかは、疑問ですよ、というだけだ。


でも私に言わせりゃ、今の世の中、看護士という資格を持ってるだけで(番組に登場した23歳の女性の職業)、十分安定した部類に入ると思うんですけどねぇ。信用金庫(婚活パーティーで知り合ったデート相手の30代男性の勤務先)よりよほど潰しがきくと思うよ。


「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま

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