電子書籍という食事

phoさんの記事を読んで以来、自炊するかどうか本気で悩んで数日。
周囲の人とも話してみたのだけど、今の段階では圧倒的に紙の優位性はぬぐえない。


最近、本を裁断してPDF化することが「自炊」と呼ばれているようだけど、自炊で出来る料理って実は宇宙食なんじゃないかと思う。
限られた栄養素については揃ってるけど、なんか微妙なところが色々足りてないんじゃないかみたいな。*1


特にビジネス書なんかは電子書籍としては理想的な料理だと思う。
大概が読み捨てられるものだし、気軽に付箋を貼ったり、ラインを引いたり、目的の単語だけを検索してみたり。
旬が命、足が速いビジネス書こそ、電子書籍で出すべきだろう。


小説はどうかな。これも私は電子書籍で十分だと思う。
特にミステリーとかハーレクインとか(笑)数を読みたい人にはうってつけだろう。
グルメというよりグルモンという人にとって、電子書籍は腹は膨れるけど脂肪にならないという理想の食事。
一方、その装丁や紙の質感なんかひっくるめて一つの作品として大事に読みたいという、スイーツ好きな女子って感じの読者は、それこそ「紙」を買えばいい。
何も全部が電子書籍にならなきゃいけないって話じゃない。
昔、レコードがCDに取って代わってから10年くらいはコレクション向けのレコードなんてのも出てたように、将来的にはコレクター向けの「紙本」なんて感じになるかも。


私が一番書籍に向かないなぁと思うのは、実は参考書、問題集の類だ。
そして一番改良次第で何とかなりそう、というか何とかして欲しいのもこのジャンル。


ブラウザだと読み上げ機能というのがあるけど、同じようなものがPDFにもあるのかな?
ありそうな気がするけど、それをもうちょっと進化させてWEBみたいに使える問題集とかあるといいなぁと思う。
ちなみに、どうも私はあのDSみたいなゲーム式問題集というのには馴染まない。
何しろ余計なことに時間がかかりすぎるから。


それよりももっとシンプルに、ぱっと見は普通のPDF化した問題集風で、例えば空欄に答えを記入すれば文字や記号として反映されたりして、ついでに答え合わせまでしてくれるような機能が欲しい。
私は和田秀樹が受験業界の風雲児として「受験は最初から赤本で勉強しろ」という受験テクニックで一世を風靡した時代に受験生だったのだけど、アレなんてまさに電子書籍でやったら理想的だろう。
最初から赤ペンで記入する手間なんていらない、最初は答えを表示した状態で読んでいって、何回か読んだら今度は答えを消して自分で解答していって・・・。
技術的にはすごい簡単なことのような気がするのだけどなぁ。


参考書が向かないと思うのは、ひとつは調べモノ系って何冊かを手元に置いて見比べたりしたいからという理由。これは単に裏で開きゃいいじゃんって言われそうだけど、その都度、画面が消えるっていうのは私の脳の構造と上手くフィットしない。目の前から消えたものは存在を忘れるのだ。
この感じ、上手く表現出来ないんだけど・・・例えばIEってタブじゃないよね、私はタブが無いブラウザがすごく苦手。何度も同じサイトを別ウィンドで開いてしまうから。そういう感じ。


もう一つは、山川の日本史の教科書とか思い出してもらえるとわかるだろうけど、本文と欄外の注というので文字の大きさが違うでしょ、あれをそのまま電子書籍で再現するとすごく読みにくいと思うのだ。一回一回伸ばしたり縮めたりして読めばいいけど、どう考えても鬱陶しい手間だ。


けどラインを入れたり消したり出来るのはいいよな、消える蛍光マーカーなんてもう不要だ(笑)
ついでにチェックペン機能とかあるといい。


電子書籍の優位性に注目して書いてみたけど、「場所をとる」「かさばる」「重たい」というような質量的制約を除けば、結局、紙の「本」って完全な自然食で、まぁそりゃそれを加工したのが電子書籍なんだから当然といえば当然なんだけど、うん、やっぱり昔から食べられてるものって身体にいいよね、って感じがする(笑)


でも生まれたときから宇宙食しか食べてない子供はそれはそれで、環境に適応して育つのかもね。
「今の子供達って、辞書は当然電子辞書なの?紙の辞書なんて使わないの?そんなんで英語力が身につくの?」
なんて言ってた人がいたけど、私は紙の辞書もほとんど使わず受験を終えた人間なので「別に辞書引いたって覚えない子は覚えないよ」(現に私は、調べたい単語を辞書で引いて、ついでに前後を見て知識を増やすなんて余裕のある勉強は出来なかった)って答えるし、今の子たちもそれはそれで新しい方法に最適化した脳になっているような気がする。
人間の脳は作業によって進化する部分があるだろうから、それによって廃れる能力もあれば伸びる能力もあって、まぁそれでいいんじゃないかって思う。


・・・で、結局のところうちの山積みの本はどうなるのかは・・・自炊道具を揃える予算との兼ね合いですかねぇ。


プロの道具達
鍋(案外安い)と包丁(案外高い)と皿・・・のiPadAmazonには無い。
 

*1:もっとも、この例えの前提としてる「自然食」ってのが何なの?っていう問題はありますが。そもそも人体にとって「正しい」食事ってもの自体、色んなアプローチがあって、結論なんてあるの?って感じなので、あんまり適切な例じゃなかったかもしれない。