酒と男と子供と泪

最近の男ってよく泣く。
若い子が、じゃなくて、おじさんでも。
酒が入ってなくても。
何となく・・・だけど、子供がいる男性は特に、涙もろいように感じる。


でも一番の要因は、年とって、一種の生理現象である涙腺の制御がきなかくなってるだけじゃないか?と思ったり(笑)
というのも、何しろ自分がものすごく涙もろくなってしまったからだ。
先日も、ことあろうか会社のフロアで上司を前に大泣きしてしまって、自分でびっくりとか。
昼間の外資系ホテルのこじゃれラウンジで、友人相手におんおん泣きながら喋ってたり。
傍から見たら完全に頭のオカシイ女だ。


昔、まだ私が学生だった頃、おかんが娘を相手によくぐしゃぐしゃ泣きながらあれこれ喋ってるのを聞きながら
「この人は(私と違って)感情が豊かなのだなぁ」
と、幼心に非常に冷静に親を観察してたものだが、あれにそっくりになってる自分に驚く。
その年になってみてわかる・・・感情が豊かなんじゃなくて、単に涙腺の制御に不具合が生じてるだけだったのだねぇ。


ちなみに私は過去、卒業式やら送別会やらで涙を流したことがない冷徹な女。
なんかねぇ・・・そういう場になると、感情が固まるんだよね。
かわいげがなくて良くないので、もう少し場所を考えて涙腺をコントロールできるようになりたい。


・・・だってさぁ、いい歳して子供がいない女が、たとえば送別会とかでしれっと挨拶してたりすると、
「やっぱ子供がいない人って、人間として優しさが無いよね。」
って言う人、絶対いるんだから!
大手小町、見てみろよ。
(しかも、そういうこと言う人って、当然、十中八九、子持ちの女性。
そのセリフを子なしの前で吐ける時点で、十分オマエモナーだ。
でもそういう人に限ってきっと(思ってもないのに)「好ちゃんはこれからだから」って言うんだよな。)
言わせとけって思うかもしれないけど、やっぱりさぁ、人生で学ぶべきことを学んでないから半人前です、って言われるのって、本当に傷つくんだよね。


ただ、実際に、子供がいないと分らない感情というのもあるのは確かで。
このまま一生独身で子供がいない人生を歩むことになったとき、ある種の人たちとは絶対に分かり合えない部分があるんだろうなぁとは思う。
誰かを自分の分身として持つ、しかもその誰かはただ自分の身を分けたというだけで一人の別の個人である、という独特の状況というのは、やっぱり本当に経験してみないと絶対に本質的にはわからないだろう。
そしておそらくそれは、例えば養子を育てたりするのとは、また少し違うような気がするのだ。


私がそれを一番実感したのは、姪や甥の写真を見たときだった。
本当に不思議なのだけど、初めて、それも二次元の写真だけで対面したのに、私の腹の底から湧き上がる本能的な「かわいい〜」という感情に、自分で圧倒されてしまった。
基本的に子供好きではないので、他人の子供を見ても非常に冷静(むしろ公共の場で騒ぐガキには怒)な性質なので、他人様の子供の写真を見てもこんな反応は決してない。
にも、関わらず、だ。
「血」の恐ろしさに震える思いがした。


だから私は子供が殺人を犯した両親の気持ちを考えると、切なさで息苦しくなる。
子供を亡くした両親の思いは言わずもがなだが、自分ではないがある意味自分、が犯した恐ろしい罪。
どれほどの生き地獄であろうか。
「あなたの教育が間違っていたからです」と言われても仕方ない。
いや、教育じゃない、「あなたの”存在”が間違ってるんです」と言われるのと同じだ。
モンスターを産み出してしまった自分。
いや、むしろ私がモンスターなのか。


だから、もし、人生でリスクをとらないなら、子供を産まないという選択もありだと思う。
でもリスクをとらなければリターンは得られない。
そういうことなのだろうと思う。