悪の恋愛術
福田和也。初版は2001年。
恋愛って小難しく語られても何の意味も無いものの典型だと思うので、こういう本は本当に時間の無駄、ということでGWの暇つぶしにうってつけ。
評論家先生が、(おそらくは)苦手分野であろう恋愛をどう料理するかが読みどころ。
昔、「FRAU」に連載してたのをまとめたものだと思ったんだけど、あとがきを読むと・・・記憶違い?
まぁしかし想定読者はお年頃の女性ということには変わりなく、署名には「恋愛術」と名がつく以上、一応先生も(おそらくは)少ない経験を振り返り知恵を絞っていくつか恋愛術(ハウツー)を指南しております。
師曰く
- 恋愛とは相手に興味を持つことである
相手を知りたい、相手の世界を知りたいと思い、実際にそうすることで自分の世界が広がるのが恋愛の醍醐味。
恋愛は自分磨き。
先生はかの小林秀雄の「自分は女という学校で成熟した」という言葉を引用しております。小林秀雄キモイ。
- きっかけは作為的に
場合によっては相手の鞄の中身を盗み見ることも辞さない覚悟で。
>・・・えー?
- 恋愛とは時間を共有することでしか深まらない
やっぱり遠くの美人より近くの(やれる)ブスということでしょ?え、違う?
- 相手を褒める、それも表象的に
同僚の女性に「今日のマニキュアいいね、パンプスの色とあわせたの?」と聞いてサブがられてたキモメンを思い出す。
女は嫌いな男に細部を観察されることをことのほか嫌がります。
- 相手に自分の刻印を残せ
ヤキを入れるってことですね。
効果的なアプローチの仕方を考えて実行しろ、でもストーカーとかレイプとかで警察沙汰になるなよ、なんてご丁寧な忠告つき。
この本の想定読者って・・・誰?
そんな先生も学生時代は慶応高校という印籠でブイブイ言わせたらしいですよ。
すごいね、KOブランドって。
先生がおっしゃるには、世の中には「慶応」と名が付けばどんな男でもいいって思う女子がいる(いた?)らしい。
だからコケシみたいな先生でも恋愛術について指南できるほどの経験値を積むことが出来たんですね。
先生の奥さんは大学時代の同級生の大岡山の医者(しかも大学教員)の娘とかさりげなく自慢してるし。
言ってみりゃナカミーつかまえたようなもんですよね。
でも不思議と先生の文章にはこういうオレ自慢の文章についてくる鬱陶しさが無いのですよ。*1
やはりティーンというモンモンする時期にケイオーでブイブイ言わせて、妙なルサンチマンにとりつかれることもなくすくすく生育出来たからなのでしょうね。
つくづく少年期の環境の重要さを感じさせられました。
私が親になったら絶対に慶応をお受験させよう。(間違っても早稲田じゃない)
ところでこの本、最後の最後でなかなかいいことを書いてましたので引用。
恋愛のハウツー本が多くあります。
雑誌も頻繁に、恋愛の特集を組んでいます。
こういったハウツー企画の需要が高いのは、恋愛がうまくいかない人が、読んでいて「楽しい」からではないかと私には思えます。
「恋のチャンスを呼び込むためにはまず、内面を磨け」とか「長期戦の恋なら、自分がいかに相手を理解しているかをアピールする」などといったアドバイスが実際に有効かどうかは、甚だ疑問です。
でも、実際は「役に立つ」ということは、そこでは求められていないのだと思います。
いずれも、さしあたっては今は何もしなくていいと云っているわけです。極端に云えば、今のままの自分を肯定してもらえるわけですから、それは耳に心地よいでしょう。
最後にこの本、全否定・・・。
でも「自分磨き」=「何も変わらなくていい」というのは至言だと思いました。